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No.3 少額訴訟(1)

第3巻第3号≪通巻3号≫
2004年 冬号
少額訴訟T
 《 少額訴訟手続き 》
 少額訴訟とは、簡易裁判所の訴訟手続きの中で、60万円以下の金銭の支払を目的とする訴えについて、通常の訴訟より簡略化する特別の手続きです。(民事訴訟法第368条〜 第381条)市民間の紛争の中で少額な訴訟について、できるだけ少ない時間と労力で解決が図れるようにとの趣旨で、平成10年に施行された民事訴訟法により導入されました。
 この手続きを利用するには、原告は訴えを提起する際に、少額訴訟による審理及び裁判を求める旨を申し出なければなりません。また、被告は、この手続きを利用したくない場合、通常の訴訟に移行したい旨を申し出れば、その申し出があった時に通常の手続きに移行することになります。
 ・法廷はいつもの法廷と少し違う
 普段テレビなどで見ている法廷は、高いところに裁判官がいて原告、被告を見下ろしていますよね。
 しかし、少額訴訟の場合はいつもの法廷ではなく、1つの大きな丸いテーブル(ラウンドテーブル)を原告、被告、裁判官及び司法委員が取り囲んで行われます。また、裁判官の服装も、いつも着ている真っ黒な法衣ではなく、男性裁判官ならスーツ姿です。
 ですので、今まで持っていた裁判のイメージとは少し違ちがっていますし、裁判という緊張感をいくらかほぐしてくれるような雰囲気で審理が行われます。
 ・少額訴訟手続きの特徴
 @ 60万円以下の金銭の支払の請求であること
 金銭の支払を目的としていなければならないので、訴額が60万円以下であっても以下のよう訴えは認められません。
 例) 賃料不払いや賃貸借契約期間の終了による、土地や建物の明渡請求所有権の移転や抵当権の抹消などの登記手続を求める訴え
 例) 所有権の移転や抵当権の抹消などの登記手続を求める訴え
 例) 債務の存在や金額に争いがある場合にする、債務不存在確認の訴え
 例) 近所の騒音の防止やゴミの撤去を求めたりする訴え
 A 利用回数は同一の簡易裁判所において1年間に10回までに限られる
 このような利用回数の制限はどうして設けられたのでしょうか。それは、利用回数に制限がない場合、金融業者が債権取立てのために利用して、本来の目的であった一般市民の利用が妨げられるおそれがあるからです。少額訴訟手続きが一般市民の紛争を解決する為に始まったという制度の趣旨を大事にした規定といえますね。よって、原告は訴えを提起する際に、その簡易裁判所でその年に少額訴訟を利用した回数を届け出なければならないことになっています。
 B 原則として1回の期日で判決が言い渡される
 少額訴訟は簡易・迅速を目的とすることから、当事者が何度も裁判所に出向く手間が省かれるよう、出頭したその日に判決が出されます。(これを「一期日審理の原則」といいます。)ただし、1回の期日で結論が下されるわけですから、その1回の期日で自分の言い分を十分に主張できるように証拠等をしっかり準備しておかなければなりません。
 C 証拠調べに制限がある
 「一期日審理の原則」から、少額訴訟では手続きにも制限が設けられおり、証拠調べは即時に取り調べられる証拠に限られます。具体的には、
 1) 出頭した本人の証言
 2) 同行してもらった証人の証言
 3) 契約書・領収書・写真など、法廷に持参した書類
 などです。
 D 支払の猶予や分割払いの判決を言渡すことができる
 裁判所は、被告の資力その他の事情を考慮して特に必要があるときには、判決言渡しの日から3年を超えない範囲内において、支払の猶予や分割払いを定めることができます。
 これは、被告が判決に基づく支払を容易にし、できる限り最後まで被告の意思で支払ができるようにすること、また、原告が強制執行を行う負担を無くするようにとの配慮によるものです。
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