登記できる建物とはどういうものでしょうか?
まず、不動産とは民法第86条1項に「土地及ヒ其定著物ハ之ヲ不動産トス」と規定され、最高裁の判例では「土地の定着物とは、継続的に土地に固着し、しかも固着して使用されることがその物の取引上の性質として認められるものをいう」と述べられています。その定着物の代表的なものが建物です。他に樹木、石垣等も定着物です。
不動産登記法第14条に「登記簿ハ土地登記簿及ヒ建物登記簿ノ二種トス」と規定されています。他の法律によってできる立木登記簿、船舶登記簿というものもあります。
では、登記できる建物とはどういうものをいうのでしょうか。
法律(民法、不動産登記法)で具体的にこういう建物が登記できる建物と規定されてはいませんが、法務省民事局長通達の不動産登記事務取扱手続準則第136条第1項に
「建物とは、屋根及び周壁又はこれに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものをいう。」と規定し
建物の認定基準が示されています。
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@定着性 A外気分断性 B用途性
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建物として認定するにはこの3つの要件が必要!
さらに、構築性(材料を使用して人工的に構築)取引性(独立して取引の対象となる)も必要とする考え方もあります。
@ 「定着性」について、
物理的に土地に固着していることが最低の条件ですが、この定着性の意味は、コンクリート基礎にボルトで固定して移動が不可能に近い状態をさすものではなく、建物が永続的に利用されることが認められるものであればよいと解されています。
(例)昔の建物は土台石の上に柱部分を建てただけ(固着されていない)の建物が多かったことからもわかります。(現在では神社、寺院の建物に見受けられます)さらに建物に「定着性」があるというためには、建物の構造、利用目的から相当長期間継続して土地に定着して利用される、というようにそのものに永続性がなければなりません。
固定が十分でない工事現場におけるプレハブの飯場事務所とか組立て式物置等は定着性があるとはいえません。上記神社、寺院の建物には永続性があります。
A 「外気分断性」について、
屋根及び周壁又はこれに類するものでもって外気と内気を遮断することによって、人と物とがその空間において滞留することができるように工事されていることが必要です。
(例)ガソリンスタンドに見られるようなキノコ型の建造物、材質に耐久性がないビニールハウス等は「外気分断性」があるとはいえません。
例外的に認められている建物は競馬場、野球場の観覧席、鉄道の駅等の建物で上屋のある部分は建物と認定されています。これは用途性を重要視しているものと思われます。
B 「用途性」について、その建造物が外部から遮断された一定の広さを持つことによって
安全な生活(居宅)、仕事(事務所)、物を貯蔵(倉庫)する等「生活空間(人貨滞留性)」を有し、その目的とする用途に利用できるものでなければなりません。
(例)鎌倉の大仏 見学者は内部に入ることはできますが、内部を利用するための設備等がないため建物としての用途性(利用目的が判明しない)を欠くため建物と認定されていません。竜串の海中展望塔は観光施設として利用されており用途性に問題はなく、登記できます。種類は「店舗」もしくは「展望塔」となるのではないでしょうか。
以上、建造物が建物として登記できる建物か否かの判断は、上記の三要素に構築性+取引性が加味されて判断されます。したがって、居宅、事務所、倉庫等種類によって建物として登記できる完成度が当然違ってきます。
では、建築中の建物について、工事がどの程度まで進捗したら建物として表示登記ができるのでしょうか。
@利用目的が「倉庫」「物置」の場合
屋根、周壁が備わっておれば床、天井がなくても建物として認定して差し支えないでしょう。
A利用目的が「居宅」の場合
少なくとも人が生活できるような状態まで完成していなければならないことになりますが、外装工事の足場がとれ内装工事も下地ができ、いつでもクロスが張れる、畳もいれれる状態になっておれば建物と認定して差し支えないでしょう。
B利用目的が「事務所」「店舗」の場合
居宅同様に床が完成している状況になれば建物と認定して差し支えないでしょう。
それでは、登記できる建物は土地とは別個独立の不動産として所有権等の権利関係が登記されていくのですが、
登記できない建造物はどのようになるのでしょうか。
建造物を築造したとき所有権関係をはっきりしておけば所有権関係はそれほど問題はないのですが、
抵当権については問題が発生します。
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まず建造物が築造された後に土地に抵当権が設定されていれば、その抵当権はその土地上にある建造物に及びますが、土地に抵当権設定後に建造物を築造した場合、その抵当権がその建造物に及ぶか。
これは、民法第370条の
「目的タル不動産ニ付加シテ之ト一体ヲ成シタル物ニ及フ」の「付加」を民法第87条の従物とみるか、民法第242条の付合とみるかによって結果が違ってきます。
@「従物」とみれば
土地に抵当権設定後建造物が築造された場合、その建造物に抵当権の効力はその建造物に及ばないとする判例があります。
A「付合」とみれば
土地に抵当権設定後建造物が築造された場合でも、その抵当権の効力は建造物に及ぶとの判例があります。