今回から民法の定める担保について簡単に述べます。
その前に「物権」とは、「人が特定の財物を直接に支配することを内容とした権利」です。
そして、同一の物の上には互いに相いれない内容の「物権(所有権・地上権等)」は同時に2個以上成立しないことを「一物一権主義」といい、このことで「物権」には「排他性」があるといいます。
また、「物権」は「民法、商法等」で定められており、個人が勝手に作ることはできません。これを「物権」法定主義といいます。
民法の認める「物権」には、
占有権、所有権、地上権、永小作権、地役権、入会権、留置権、先取特権、質権、抵当権(根抵当権を含む)の10種類が認められています。
担保制度は、債権者が債務者から債権の弁済を確実にするための制度です。
債権は、債権者が債務者に対して一定の給付(例 弁済)をなすことを請求する権利で、債務者が任意に給付(弁済)をしないときは、債務者の一般財産に対して強制執行をかけ、その代価をもって債権の弁済に充てるのが一般的です。
無担保債権者間では、債権の発生の前後を問わず債権者は平等で債権額に応じて弁済を受けることになりますが、債務者の一般財産が時期によって経済価値が減少し、弁済を受けられない場合がでてきます。
そこで、優先的に弁済を確実にするために、一般財産による担保以上のものを求める事になります。それがいわゆる担保制度ということになります。
担保制度には、人的担保と物的担保とがあります。
人的担保とは、債務者以外の第三者の一般財産をもって債権の担保とするものです。
保証債務、連帯債務が主なものです。人的担保は、担保する人の一般財産の変動によって担保の価値が変化しますので、担保者の人的信用に依存することが多いようです。
物的担保とは、債務者又は第三者が所有する一定の財産をもって担保にするもので、物の客観的な価値によって担保されるものです。
担保物権の種類
1 留置権 他人の物の占有者がその物に関して生じた債権を有する場合に、その債権の弁済を受けるまでその物を留置する権利です。
例 時計商が他人の時計を修理した場合、その修理代の支払いを受けるまで留置権に基づいてその時計を留置することができる権利です。
2 先取特権 法律である種の債権を保護するため、その債権者が債務者の総財産又は特定の財産から他の債権者に優先して弁済を受ける法定担保物権です。
種類としては、
(1) 一般の先取特権
@ 共益費用の先取特権 各債権者の共同の利益のために行なった債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用
A 雇人の給料の先取特権 雇人の給料債権最後の6ケ月間のものに限られます。
B 葬式費用の先取特権 資力の薄い者でも葬儀が行なえるようにという政策的考慮によるものです
C 日用品供給の先取特権 債務者又はその扶養すべき同居の親族の生活に必要な食料品、光熱水料代で他の債権者との関係から6ケ月間のものに限られます
(2) 動産の先取特権
債務者の特定の動産を目的とする先取特権
@ 不動産賃貸の先取特権
不動産の借賃その他賃貸借関係から生じた債権について賃借人が賃借物に備え付けた動産や家財道具等に認められる先取特権です
A 旅館宿泊の先取特権
債務者の宿泊料及び飲食代について債務者の手荷物について認められます
B 運輸の先取特権
旅客又は荷物の運送賃について債務者の手荷物について認められます
C その他公吏保証金の先取特権、動産保存の先取特権、動産売買の先取特権、種苗・肥料供給の先取特権、農工業労役の先取特権があります
(3) 不動産の先取特権
不動産保存の先取特権
不動産自体の保存、又は不動産に関する権利の保存、追認又は実行のために要した費用ついてその不動産について認められるもので保存行為完了後直ちに登記することが必要です
不動産工事の先取特権
大工など請負人が不動産に関してした工事費用についてその不動産について認められるもので工事の着手する前に費用の予算額を登記することが必要です
不動産売買の先取特権
不動産の売買代金及びその利息についてその不動産の上に認められる物で売買契約と同時に登記することが必要です
3 質権 質権は、債務者がその債権の担保として債務者又は第三者(物上保証人)から受け取った物を債務の弁済があるまで留置し、債務の弁済がないときはその物の価格によって優先弁済をうける約定担保物権です。
動産質はいわゆる質屋での営業が一般的
権利質は建物の火災保険の質権設定が一般的
4 抵当権、さらに根抵当権、譲渡担保などがあります。