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No.28 担保物権及び民事執行制度の改正について3

第1巻第28号≪通巻28号≫
2004年 冬号
担保物権及び民事執行制度の改正について3
 「担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律」が平成16年4月1日から施行されました。
 その主なものの続編です。
 4 賃貸借に対する抵当権の効力(民法387条、395条)
 短期賃貸借制度は占有屋等による執行妨害に濫用される例があり今回の改正で短期賃貸借制度は廃止され、抵当権に後れる賃貸借は、期間の長短を問わず、抵当権者及び買受人に対抗することができなくなった。そして、賃借人が前所有者に差し入れていた敷金は承継しないこととなりました。そこで新しく建物明渡猶予制度及び抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度が創設されました。
 1 建物明渡猶予制度
 この制度は、賃借人が競売による建物の売却によって突然に生活、営業の本拠からの退去を求められることにより被る不利益を避けるため、抵当権者に対抗することができない賃貸借に基づく抵当建物の占有者に対し、建物の競売による売却の時から6か月の間は、建物を明け渡さなくてもよいこととするものです。
 @ 明渡猶予の対象となる者
 抵当権者に対抗できない賃貸借に基づき抵当建物の使用又は収益をする者で、競売手続の開始前からの占有者であること、又は強制管理若しくは担保不動産収益執行の管理人が競売手続きの開始後にした賃貸借に基づく占有者であることを要します。
 土地の賃借人や、建物の競売による売却による所有権移転時期(代金の納付時)に現実に抵当建物の使用又は収益をしていない者、無権原での占有者や、使用貸借に基づく占有者は対象外
 A 明渡猶予期間
 買受人が代金を納付した時(所有権が移転する日)から6か月
 2 抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度
 この制度は、抵当権設定後の賃貸借につき登記がされ、かつ、これに優先する抵当権を有するすべての者がこれに対抗力を与えることに同意し、その同意につき登記がされたときは、その賃貸借は抵当権者に対抗することができることとするものです。
 要件
 @ 賃借権設定について登記がされていることが必要
 A 賃借権設定の登記前に登記された抵当権を有するすべての者の同意が必要
 B 抵当権者の同意について登記があることが必要
 C 抵当権者の同意により不利益を受ける者(転抵当権者、抵当権の被担保債権の差押債権者、質権者等)がある場合は、その者承諾書(印鑑証明書付き)が必要
 敷金の登記
 抵当権者の同意により賃貸借に対抗力を与える制度の創設に伴い、敷金が新たに賃借権登記における登記事項とされました。これにより、敷金の登記がなければ、賃借人は敷金返還請求の存在を買受人に主張できなくなりました。
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